令和7年5月27日〜29日に、総合科学教育研究センターの有吉健太郎准教授が委員を務めるInternational Union of Radioecology(IUR)主催のワークショップ”SMRs and our ecosystem”がカナダのマクマスター大学で開催され招待講演を行いました。
 諸々の議題の核は小型モジュール炉(Small Modular Reactors: SMR)と呼ばれる小型の原子炉(トラックや列車、船で運搬可能なサイズの原子炉)に関するものでした。これは、ワークショップの主な原資がカナダ政府による「SMR実現プログラム(Enabling Small Modular Reactors Program)」であるとともに、依然多くの課題を抱えるSMR敷設・運用を話し合うことが目的であるためです。
 日本では福島の原子力発電所の事故以降、原子炉の稼働停止が決定、その後段階的に再稼働の流れとなっておりますが、その間アメリカを中心とした西欧諸国は、温暖化問題の中での脱炭素、膨大な電力を必要とするAIデータセンターの設置、益々電化される社会事情、ロシア・ウクライナ間の戦争によって顕在化した安全保障問題等を背景として、電力政策の見直しと推進が猛烈な勢いで行われております。その時勢の中、ひとつは福島の事故を教訓とし(事故リスクの最小化を目指す意味で)、SMRの採用・設置が進められており、あるいは電力不足の問題を抱える多くの国での将来の設置が検討されています。
 本ワークショップは、(テーマ1)「SMRの設計と開発に伴う技術上の課題は何か?」、(テーマ2)「環境面および放射線生物学的な課題は何か?」、(テーマ3)「SMRの持つ社会的・大衆的な認識や倫理的な課題は何か?」等、3つのテーマに纏わる発表と討議(1日目と2日目)、そしてテーマごとにグループに別れた活発な議論とそのまとめ(3日目)といった順番で進行されました。非常に多岐にわたる内容に関して3日間話し合いましたが、今回話し合われた内容は、IURのポジションペーパーとしてInternational Journal of Radiation biology誌に掲載予定です。